HLR/HSSの開放と課題—2016年8月新規事業トレンドレポート

2016.09.23

新規事業の動向を月次でお届けするレポート。2016年8月、PR TIMESを中心に新規事業関連をリリースした企業を業界別に分けたものが以下の表になります。

2016-08-1

IT・情報通信が約4割を占めるカタチになりました。

1位 IT・情報通信 約43%
2位 生活・サービス 約29%
3位 金融 約14%

IT・情報通信分野内での動向を分析しグラフに表したものが下図になります。

2016-08-2

ニュースリリースの半数をIT・情報サービスが占めており、ソフトウェア、eコマースが続きました。

ついにHLR/HSS解放−フルMVNO 2017年提供開始

8月のトピックとしてぜひ触れておきたいのが、HLR/HSSの開放についてのニュースです。2016年8月29日、「インターネットイニシアティブ(IIJ)」は、、「NTTドコモ)」に対し「HLR/HSS」の連携に関する申し込みを行い、同日承認を得たことを発表しました。

「HLR/HSS」とは、SIMカードに紐付けられている電話番号や契約内容、携帯電話の現在地等の情報を管理するデータベースを意味します。現在、MVNOが展開している格安SIMは大手キャリア(MNO)から回線を借り、それを顧客に提供するシステムになっているため、MVNOがSIMを自由にコントロールできないような仕組みになっています。HLR/HSS開放により、顧客管理に関する様々な運用がMVNO側で可能になると言われています。

その一つに国際ローミングがあります。大手キャリアから回線を借りているMVNOは海外でローミングする際に、キャリアのSIMと認識されてしまうため、MVNOはキャリアが提供するローミングサービス以外利用ができませんでした。今回の連携により、IIJが独自にSIMを発行することができるようになり、国際ローミングに関して自由なサービス設計が可能となります。現地のキャリアと交渉する必要がありますが、既に海外ではフルMVNOで提供するローミングサービスが存在しているため、交渉はスムーズにいくであろうと言われています。

加えて、独自のSIMカードの発行ができるようになり、様々なサービスが提供できるようになります。1枚のSIMカードで複数のキャリアを切り替えることも技術的には可能になります。また、SIMカードの形状やデザインも自由度が高まるとされています。今まではキャリアが情報を書き込んだSIMカードをMVNOに渡していたため、独自の印刷をしようとするとICチップを傷つけてしまう恐れがあるため敬遠されていました。

この他にも、NFCの技術をSIMカードに組み込んで金融サービスの認証に使うことや、SIMカードとマイナンバーとの連携に生かすことも検討されています。

このようにフルMVNOはメリットがたくさんあるように思えますが、フルMVNOが独自に提供できるのは、今のところ「データ通信」に限られています。HLR/HSSを開放したことにより、独自の音声サービスが提供できるようになるわけではありません。また、MVNOがHLR/HSSを運用するための技術的な方式が決まっておらず、特にネットワークの安定運用やセキュリティの面でキャリアが懸念を示しています。
課題は山積みですが、画期的なできごとであることに変わりはありません。

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