クラウドで広がる民泊の可能性—2016年7月新規事業トレンドレポート

新規事業の動向を月次でお届けするレポート。2016年7月、PR TIMESを中心に新規事業関連をリリースした企業を業界別に分けたものが以下の表になります。

2016年7月:新規事業リリース企業(業界別)

IT・情報通信が7割を占めており、続いて生活・サービスと続きました。
1位 IT・情報通信 70%
2位 生活・サービス 20%
3位 金融 10%
IT・情報通信分野内での動向を分析しグラフに表したものが下図です。

2016年7月:IT・情報通信業界の内訳

IT情報サービスが過半数を占め、残り約4割がソフトウェアとなりました。

民泊のチェックイン・チェックアウト業務をクラウドで簡単に

今回はIT情報サービスから民泊ビジネスの支援サービスについての記事をご紹介します。

ライヴエイド株式会社(以下、ライヴエイド)は、民泊において必要となる鍵の受け渡しやゲスト名簿の管理をクラウドで行うサービス「Keyport」の提供を開始しました。

近年、日本でも個人が住宅を活用して宿泊サービスを提供する「民泊」というシェアリングエコノミーに注目が集まっており、民泊の代行業者も数多く存在しています。ただ、チェックインやチェックアウトに際しての鍵の受け渡しやゲストの本人確認など煩雑な業務は、ホストや民泊代行業者が個別に対応が行っているのが現状です。

Keyportは民泊において必要なチェックインやチェックアウト業務をクラウドで一括代行することにより、多くのホストや民泊代行業者のコスト削減やセキュリティの向上を狙ったサービスで、主な特徴は以下の3点です。

1点目は提携店舗における鍵の管理・受け渡しの代行です。これまでの、宿泊物件のポストを活用したり、ゲストとの待ち合わせを行ったりして、鍵の受け渡しをするやり方に比べ、セキュリティ面やコスト面での改善が期待できます。7月14日の時点では、都内の漫画喫茶など8店舗が明らかになっています。365日24時間営業している提携店舗があるのも利点の一つです。

2点目はゲスト名簿の作成と管理の代行です。現時点では法律上求められてはいませんが、ゲストの個人情報確認は安心してホストが貸し出しを行う上で重要な手続きです。Keyportでは、ホストや民泊代行業者は、PC・スマートフォンから簡単に管理を行うことができるようになります。

3点目は施設利用開始時と終了時の対面確認の代行です。Keyportでは、鍵の引き渡し時及び返却を提携店舗で行うため、宿泊施設の利用開始時と終了時に対面で自動的に本人確認が行われることになり、セキュリティの向上につながります。

以上、Keyportのサービスをご紹介しましたが、現状では民泊市場には様々な課題が残されています。代表的なのは、いわゆる「ヤミ民泊」。宿泊料を受けて人を宿泊させる以上、旅館業法に則り地方自治体から許可を得る必要がありますが、現状は無許可で民泊を行っているケースが多いようです。

2016年4月に厚生労働省が規制緩和を行いましたが、政府と地方自治体の見解が異なっているのも見過ごせません。旅館業法における簡易宿所営業の許可要件のうち「フロント設置の義務」は「撤廃」され、「客室延床面積の基準」は「緩和」されました。しかし、実際に営業許可を交付する各自治体の条例を見てみると、簡易宿所の許可要件として依然フロントの設置を求めている場合があります。厚生労働省は自治体に弾力的な条例の運用や改正の検討を要請しているようですが、こうしたねじれの解消にはまだ時間がかかりそうです。

2020年東京オリンピックに向けて、今後も民泊需要は高まっていくと思われます。そうした中、民泊市場を更に成長させていくには、Keyportのような民間の支援サービスだけでなく、国や自治体の法整備も不可欠でしょう。官民歩調を合わせて市場が整備されていくことが望まれます。

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