新規事業は「アイデア」より「実行・検証」に着目を

2016.10.26

年々活況を帯びている企業での新規事業。いざ任命されたのはいいものの、「何をしたらいいか分からない」「なかなか事業化まで辿り着かない」「評価基準が曖昧でモチベーションが上がらない」等の声が聞こえてきます。そこで、企業の新規事業にかかわっている方、これからかかわる方を対象とした無料相談会を9月14日に開催。各参加者が直面している課題に触れ、どうすれば会社のなかで新規事業を進めていけるのかを紐解きました。(全2回)

【後編】新規事業の人材は、育てず探す

  • 相談者A:大企業の子会社で事業開発を担当。親会社に依存している売上と別の柱を設けるべく新規事業に力を入れているが、会社からは直近の売上増も求められている。
  • 相談者B:起業経験あり。その後ジョインした現職にて、取締役として起業出身者や部署間異動メンバーと新規事業に着手。モチベーションや待遇に課題を感じている。
  • 相談者C:大企業の管理部門に所属。スキルセットで集められた新規事業専門部隊のメンバーが行き場を失ったと嘆いており、彼らをどう応援していくべきか悩んでいる。
  • 相談者D:大企業の新規事業部門に最近転職。メンバーに一定の裁量権があり、オープンイノベーションのマッチングや、協業、パートナー開拓先の探し方を模索中。
  • 進行、メンター:プライマルグループ代表・森上隆史(以下、森上)

イノベーションと新規事業とカイゼンは異なる

森上:皆さんから課題が出たところで、まずは「イノベーション」と「新規事業」と「カイゼン」の捉え方について触れておきたいと思います。「イノベーション」は新規事業だけでなく既存事業においても使われ、ビジネスモデルの変更がなくとも該当します。「新規事業」はある程度なんらかの規模で事業をしている企業が今までのビジネスモデルと違うものを手がけていくという風に考えています。そして「カイゼン」は、今あるビジネスモデルをどんどん磨き上げていくイメージです。

イノベーションとは?
ここでは、新規事業を中心に取り上げたいと思います。

新規事業は核となる「ビジネスモデル」が重要となってきます。ビジネスモデルには2つの要素があります。1つは、そこにかかわる人、企業、そして2つめはその間を流れる価値、主にお金や商品・サービス、情報を指します。ビジネスモデルをどう変えていくか、つまり新規事業について考えることがプライマルの仕事です。

新規事業としてやるか?それとも独立起業するか?

(スライド見ながら)「会社の中と外の違い」とありますが、独立起業のように会社に属さないでやるものと会社のなかでやっていくものは明らかに違います。独立起業についての本はよく見かけるのですが、皆さんの課題を聞いてみると、組織についての悩みが多いのですね。そこは取り扱われにくいところです。先ほど出たリーンスタートアップも企業内新規事業にも対応できると言っていますけど、おおもとの考えは独立起業から出てきているので、既存事業との軋轢をどうするかについてはわかりにくいかもしれません。

では独立起業と新規事業の違いについて考えてみたいと思います。皆さんにちょっと発言いただきたいのですが、それぞれ有利な点/不利な点って何だと思いますか?

相談者C:少なくともリソース面ですかね。お金や場所もかかわりありますかね。あとは情報量でしょうか。

森上:おっしゃるとおり、リソースが比較的潤沢であるというのはあるでしょうね。では、不利な点はいかがでしょうか?

相談者B:報酬の取り方が独立起業と比べると低めになるので、モチベーションが下がりがちと思います。

森上:ほかにご意見は?

相談者C:本当に自分がやりたいこととか正解と思っていることをやりたくても、ほかの人の意見との兼ね合いだったりとか、上からこうだと言われたとき、そこに引っ張られてしまうでしょうか。

相談者D:いい意味でも悪い意味でも承認プロセスが長い部分ですかね。

森上:そうですね。シンプルにいうと、リソースはあるけどそれを使うためにはそれなりの制約があるということです。これはトレードオフの関係にあり、いいとこどりは難しいです。新規事業がうまくいかないほとんどの原因はここに起因しています。リソースはあるものの、それを使おうとするといろんな「制約」がかかってくる。別の言い方をすると、リソースを持っている=既存事業が持っているということで、「既存事業のドグマ(古くからの考え方、慣習、やりかた)」からいかにうまく脱却しつつ、既存事業の持っているリソースを使うか。そのバランスをどうとるかが、事業をうまく進める秘訣だと思います。

既存事業はアイデア重視、新規事業は実行・検証重視

森上:(スライド見ながら)「アイデアと実行」と書きましたが、既存事業はアイデアがすごく重要です。というのも、オペレーションや実行面がある程度固まっているので、新しいアイデアを出してオペレーションシステムにのせればそれなりに成果が出るからです。だから、リソースや上層部の関心はアイデア出しに集中してしまいます。

プライマルグループ代表・森上隆史

新規事業は逆で、最初に出たアイデアや技術が本当に事業として確かなものになるのかよくわかりません。それを実行や実験のなかで確認しながら作り替えたりして、固めていかないといけないのですが、どうしても既存事業ドグマに引っ張られて技術・アイデア、プランニングに集中してしまいます。

実行・検証段階こそ会社や周囲のフォローが必要

事業アイデアの募集はよく行われていますし、新規事業部門にも既存事業において実績や功績を出した人が集められがちなんですが、事業化するためにはそのあとの実行・検証が大事で、そこは既存事業において必要な能力と相反しがちなんですよね。

チーム作りに関してもバランスを十分に考えてやらないと。既存事業の企画部や経営企画などアイデア・プランニングにかかわる仕事は華やかですが、実は新規事業は事業化までもっていく、つまり実行・実験がいかにできるかがすごく重要です。ここで皆さんつまずくことが多いです。

アイデア・プランニングまでは活発に議論できるのですが、実際に動かしてみてちょっとうまくいかなくなったら、止まっちゃうんですよね。こうなった時こそ会社や周りが関与したり、刺激を与えたりしながら前に進むような仕組みが必要なんですが、どうしてもアイデア出しを拾い上げる機能が主になっていて、そのあと進めていくところになるとだんだん周囲の関心もリソースも少なくなってしまいます。

先ほど触れたように、既存事業は仕組みができているのでそれでもいいのですが、新規事業はそこから試行錯誤しないといけないので、ここをしっかり考えないといけません。

新規事業はムダや失敗があって当然

森上:次は多様性と効率性についてです。新規事業はいろんなことをいろんな形でいろんなネタを出す、つまり多様性、もっといえばムダを作ることがすごく重要なんですが、既存事業においては「ムダを省く=効率性」を最重視します。この違いをしっかり見ておかないと、新規事業においても効率性を追求するのが正しいんじゃないかと思ってしまいます。

ある程度ビジネスモデルの検証が終わったあとで効率化をはかることはすごく重要ですが、新規事業の基本はトライ&エラー。失敗するくらいまで挑戦しないとなかなか新しいものは出てきません。実行する側は会社側にきちんとそこを理解してもらったうえで新規事業を進めないと、後半どんどん追い詰められることになります。つまり、ムダがあって当然、失敗があって当然なんです。

ただ、経営陣は既存事業の功績を評価されて昇進された方々です。通常、既存事業のドグマに染まっているので、ここのところに気をつける必要があります。

新規事業は「苗代組織」で立ち上げる

森上:最後がリソースvs自由の問題です。会社のリソースを使おうとすると自由度が減りますし、自由度を増やそうとすると会社のリソースは使いにくくなります。

新規事業をはじめる際に組織をどうすればいいのか?については、よく相談を受けるんですが、既存事業組織でやったほうがいいか?切り離された専任部隊を作ったほうがいいのか?これについてどちらがいいと思いますか?

相談者B:事業部でやるのであれば、複数のプロジェクトをやる場合とそうでない場合で違うと思います。集中と選択ができなくなるので、単一であればプロジェクトベース(切り出して)でやったほうがいいんじゃないかと思います。

相談者

相談C:うちも出向というカタチをとっていますが、みな「居場所がなくなった」と言っています。僕のなかでは事業部のなかで跳ね返りを受けながらやってもよかろうと。スキルとマインドが揃っていればどちらでもいいのではと思っています。

相談者A:日々の売上も確保しないとならないので、どうしてもリソースが足元の宿題にコツコツ使いがちです。新しいほうに手をつけられないので、やはり専任のほうがいいとは思います。

相談者D:私は専任部隊にいますが、大企業なら切り出したほうがいいと思います。ひとつひとつのプロジェクトが小さいので、関連した分野に行ったほうが会社全体としてバランスとれるのかなと思います。

森上:たしかに、既存事業のリソースを使うとなれば、似た分野に行くことが多いですね。おっしゃるとおり新規事業より既存事業が忙しくなったり、お金を稼げる分野が忙しくなったりすると、そこにどうしてもリソースが流れていきます。

一方で身の置き場がなく、もし新規事業が失敗したとき僕たちどうしたらいい?という考え方を勇気がないと切って捨てられません。新規事業が失敗する可能性は高いのですから。恐れず自ら手を挙げるような人はそもそも独立してやればいいんじゃないのか?っていうのもあります。多かれ少なかれそういう気持ちを持つのは普通のことなんですよね。

僕としては「苗代組織」を提案しています。最初は切り離して出す。育ってきて既存事業のリソースが必要ならその事業部に戻す。リソースが必要なければ、そのまま独立してやっていく。事業部に戻すかどうか判断するタイミングは、ビジネスモデルがある程度検証し終わった時点、テストしてみて小さいながらもお金を生み出した時点で判断すればいいのではと考えています。

【後編】新規事業の人材は、育てず探す

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