新規事業の人材は、育てず探す

2016.10.27

年々活況を帯びている企業での新規事業。いざ任命されたのはいいものの、「何をしたらいいか分からない」「なかなか事業化まで辿り着かない」「評価基準が曖昧でモチベーションが上がらない」等の声が聞こえてきます。そこで、企業の新規事業にかかわっている方、これからかかわる方を対象とした無料相談会を9月14日に開催。各参加者が直面している課題に触れ、どうすれば会社のなかで新規事業を進めていけるのかを紐解きました。(全2回)

【前編】新規事業は「アイデア」より「実行・検証」に着目を

  • 相談者A:大企業の子会社で事業開発を担当。親会社に依存している売上と別の柱を設けるべく新規事業に力を入れているが、会社からは直近の売上増も求められている。
  • 相談者B:起業経験あり。その後ジョインした現職にて、取締役として起業出身者や部署間異動メンバーと新規事業に着手。モチベーションや待遇に課題を感じている。
  • 相談者C:大企業の管理部門に所属。スキルセットで集められた新規事業専門部隊のメンバーが行き場を失ったと嘆いており、彼らをどう応援していくべきか悩んでいる。
  • 相談者D:大企業の新規事業部門に最近転職。メンバーに一定の裁量権があり、オープンイノベーションのマッチングや、協業、パートナー開拓先の探し方を模索中。
  • 進行、メンター:プライマルグループ代表・森上隆史(以下、森上)

親会社ができないことをする

森上:それでは皆さんの個別の課題について、さらに詳しくお聞きしたいと思います。Aさんから順にいきましょうか。

相談者A:よろしくお願いします。これまでの流れからちょっと言いづらいんですけど(笑)、社内の新規ビジネスコンテストで一番いい賞をとり、いまのポジションにいます。自社の特性を生かしたうえで何かしら優位性のある事業をやりたいんですけど、それがなかなか出てこないんです。

親会社の資源を使おうとすると色々な制約があって、一気にハードルが上がります。それで、そこに頼らないような事業を作ったほうがいいと会社は考えているのですが、そうすると他社と変わらない。じゃあどうしたらいいのか?と悩んでいます。

森上:ここまでのリソース使っていいといった明確なラインは設けられているんでしょうか?

相談者

相談者A:あるにはありますが、何かしようとしてもその都度、親会社の許可がいりますし、どうしてもこちらの取り組んでいる事業は軽んじられる傾向にあります。新規事業は2年ほど前から実施していますが、一度もうまくいっていません。

森上:(例をいくつか出し)他社で進出している例もありますから、親会社のリソースが使えないというのはどうなんでしょうね?業務内容を拝見するに、宣伝と純粋な情報がまじってしまうのを親会社は敬遠しているとかじゃないですかね?

相談者A:あ〜そうですね。

森上:親会社ができないことをするのはいいと思いますよ。

人は石垣。自分とは違うタイプの人をチームに選ぶ

相談者A:わかりました。では、検証・実行が得意な人材ってどんな感じでしょうか?

森上:一言でいうと「粘り強い人」ですかね。アイデアマンだけど実行の落とし込みができない人と、地味で面白いことも言わないけど、コツコツつめきれる人がいます。リーダーはどちらのタイプでもいいですけど、「実行が必要」ということさえ分かっておけばいいですね。

相談者A:「誰が欲しい」とか「こんな人を採用したい」みたいな話がうちの会社でも出るんですけど、普段新しいことにアンテナを張っているとか、アイデア系の人がどうしても挙がってしまいます。

森上:僕の本『逆転思考』で「詐欺師」と「オタク」って書いたんですけど、アイデア出しが得意な人はたいてい「詐欺師」。でもオタクの人はひとつのことを突き詰める。自分と違うタイプの人と組んだほうがいいです。

「人は石垣」って言いますよね。石垣って同じ形を積むよりも、大きかったり小さかったりいびつな形を組み合わせたりすると、どの角度から衝撃がきても崩れにくくなる。自分で組織をつくろうとすると、縮小再生産になります。自分と似ていて、自分より劣ったタイプと一緒にやりたがる傾向があるんです。効率化が目的の既存事業ではそのほうがいいことも多い。考え方も似ているから効率よくなるし、単純に自分と似ている人の方がかわいい。でも、似た者同士が集まった組織は、いろんな局面に対応できにくくなります。

否定されたほうがホームラン級の事業に化ける

森上:では、相談者Bさんにいきましょうか。

相談者B:新規事業部自体の存在が必要あるのか疑問に感じています。社内の新規事業コンテスト等で通過した案ですごいと思うものがあまりなくて。やりたい人ってそういうのがなくても勝手に自分で提案とかしちゃうイメージなので。丁寧に設けられていることによるメリットとかあるのか知りたいです。

プライマルグループ代表・森上隆史

森上:やっぱり既存事業の忙しさに引っ張られてなかなかきっかけがないというのはあるとは思います。ただ、おっしゃるとおり社内ベンチャー制度から核となる事業が出てきたという話をきいたことは、正直ありません。ただしそれは会社の命運を決めるような新規事業に限った話です。そこそこのヒットは出ています。ホームラン級のものがないというだけで。むしろ会社から否定される事業のほうが大化けしたりします。

いくつも例がありますけど、某IT関連企業の社長はある事業をやりたくなかったけれど、それを進めていたのがエースの技術者で、これをやらないと辞めるんじゃないかと思って投資した結果、今ではその事業が収益の大半を占めるようになっています。

某製造業のメーカーは提案が社長の逆鱗に触れて飛ばされたものの、独自で研究し、自ら売り込みに行くなどした結果、いまはその事業だけが儲かっていたりします。

某IT関連企業も大企業のなかで新規事業として提案したものがダメと言われて、独立してできた会社ですし、某文具メーカーの大ヒット商品も社長から2回ダメ出しされても続けていた技術からできています。

合議で「皆がいい」っていう商品や商材ってどうなるかわかります?

相談者B:あまりヒットしないとかですか?

森上:満場一致で選ばれたものはよくても「一発屋」になることが多いんですよね。それよりも、10人中9人はNGを出すんですけど、1人だけ「これを採用しないと辞める」というぐらい惚れ込むような事業。それが全部成功するわけではないけど、そこから息の長いホームランが出てきたりします。

実は、アイデア選びもいいか悪いかじゃなくて、「本気でその人がやりたいかどうか」で選ぶべきだと考えています。放っておいてもやるくらいじゃないと。事業アイデアコンテストにおいて会社がいまいちだと思ったアイデアであっても、その人がどうしてもやりたいというなら「勝手にやれ」と続けさせる判断があっていいと思います。

リソースは与えず、でもフォローはする。フォローしないと会社を出ていくかもしれないですから。意欲があると思ったら、会社としても「関心はある。協力はもう少し実績ができたら、追々やっていくかも」という柔軟な姿勢を見せていいのではないかと思います。

新規事業人材は「育成する」より「探す」

相談者B:新規事業人材を社内で育成することは可能でしょうか?会社経営者をしていた人間や部署異動によるメンバーと新規事業を進めていますが、明らかにマインドセットが違います。

森上:メンバーを見つけることはできますが、リーダーを育てようと躍起になるのはやめたほうがいいと思います。育てるのではなく探し出す方がいいと思います。先ほど出てきた苗代組織(前編参照)は正にそれなのですが、種の段階で選ぶよりも実際に蒔いて芽が出るか試したほうがいい。言い換えると、事前にリーダー候補を選抜して育成するよりも、意欲ある多くの人を試して芽の出た人をつまみ出すべきです。

既存事業のエースを新規事業のヘッドにするとけっこうな確率で失敗します。既存事業のエースは効率化のエース。ムダ打ちは気持ち悪いという人が多いんです。できないと決めつけるわけではありませんが、効率化とムダでもやってみるというのは相反する行為ですから。一人で両方できる人はなかなかいません。

既存事業と新規事業では、リーダーとして求められる素養が違うと思います。

相談者B:わかりました。

新規事業のチーム編成は「知識経験1:未経験1」

森上:相談者Cさんにいきましょうか。

相談者C:企業内で新規事業を行う出向メンバーにモチベーションと後押しが組織としてできるのか教えていただきたいです。

森上:新規事業部隊のメンバーはどのように集められました?

相談者C:スキルや経験が近いエリアのメンバーを集めていますね。熱意はさほど感じません。

森上:新規事業においては熱意がすごく重要です。熱意にも短期的なものと中長期的なものがあって、事業においては短期的な赤い炎ではなく、中長期的に青い炎を燃やせる人を選ばないとだめです。

能力があっても熱意がないというのは、薪ばかりあるけれどマッチがない状態と同じです。やりとげる熱意がないと持続は難しいと思います。一人ずつ別のことを考えるように言われているんですか?

相談者C:それぞれ担当は分かれています。

森上:社内で新規事業チームを編成しようとすると、ノウハウ、知識、経験がある人が集められる傾向にありますが、新規事業を進めるうえでチーム構成は、「経験者:未経験者=1:1」が理想です。人を選ぼうとするとき知識や経験にとらわれがちですが、それではダメです。そういう動きはあるんですか?

相談者C:制度としてはありませんが、草の根的にはあります。

森上:某薬品メーカーの企業のように、飲み屋で聞いた話をもとに実験し開発につなげたという事例もあります。一見ムダに思えるけど、ムダを生み出すなかから一本大ヒットが生まれる。そういう仕組みが生まれると、なにかのきっかけにはなるかと。

地道な協業先やパートナー開拓

では、最後に相談者Dさんお願いします。

相談者

相談者D:オープンイノベーションやマッチングの開拓事例があったら教えて欲しいです。

森上:オープンイノベーションといえるのかわかりませんが、協業先やパートナーを探す「パートナーリング」は沢山しています。いきなり2人が出会うより第三者がいたほうがお互い話しやすいですよね。最初からムダな話をしなくていいですし、ある程度要件をととのえある程度本音をきいてお膳立てするようなイメージですかね。

どうやって探すかというと、極めて地道にやっているのが実態ですね。たとえばクライアントが何らかの研究をしていたとして、研究者の方に気になる研究論文があるか尋ねて、その論文を執筆している大学や企業の担当の方に話を聞きに行くところから始めます。

研究の方向性や、その研究をどういうことに使おうとしているかといった事業レベルとのすり合わせ、外と組んでやる気があるかとかヒアリングし、ある程度揃ったら直接話してもらうことが多いですね。

相談者D:攻めの場合、候補先をどういうロジックで探すんでしょうか?

森上:洗い出しはしますよね。候補のロングリストをつくって優先順位をざっくりつけて、あとは時間との兼ね合いですね。限られた期間でパートナーリングしたいというなら最初に絞りこんでから、どんどん深める方向にしますし、時間があれば軽いタッチで色々と当たってみるとか。

相談者D:洗い出しとかどのくらいの人月がかかるんでしょうか?

森上:人月というより、相手ありきなので何社行くかで変わるんですが、大手企業様で最低3ヶ月ですかね。オーナー系の企業は早くまとまることが多いですけど、とはいえ、ある程度の調査や話を持ち込んでの社内調整に時間がかかります。

では、時間になりましたので、このあたりで終了したいと思います。ありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

【前編】新規事業は「アイデア」より「実行・検証」に着目を

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