新規事業TIPS vol.3) 実効性のある新規事業アイデアに困らない方法(1) 企画段階

「よい新規事業の企画/ネタがない」、「何か面白いネタないかな」とお伺いすることがよくあります。新しい発想やアイデアを出すのは難しい。皆さんそう考えていらっしゃるようです。

しかし、切り口とやり方を理解するだけで、新規事業のネタは自然に出てくるようになります

新規事業アイデアがないからといって、コンサルティング会社や、ベンチャーなど外部の力に頼りきり丸投げしても、うまくいきません。例え、出てきたアイデアが素晴らしかったとしてもダメです。なぜなら、実行主体となる皆さんの熱がそこにはありません。そうなれば、新規事業立ち上げのプロセスで必ず発生する課題に対する踏ん張りがきかなくなります。

実効性のある新規事業アイデアは、常に新規事業の検証(試行錯誤、創意工夫)の中で生み出していく必要性があると考えています(実行段階でのアイデアの出し方は次回)。

企画・計画段階(初動)で抽出した新規事業アイデアは、多様な内外環境の中で揉まれてこそ価値があり、初動のアイデア自体は机上のお話しでしかないということを認識しておく必要があります。

上記認識を踏まえ;では、企画段階で新規事業アイデアを出し続ける方法はどうすればいいのでしょうか?

それは、アイデア抽出の切り口と、日々のアイデア抽出トレーニングが重要だと考えています。

新規事業アイデアの切り口

新規事業アイデア抽出の切り口/視点として、以下8つがあります。(他の方々が話しをされているものも同じような内容ではありますので、大概をカバーでてきていると思います)

※あくまでアイデア抽出の切り口ですので、新規事業企画として成立させる為には、他の切り口も掛け合わせながら洗練化させていく必要はあります。

切り口 概要
顧客を想起する アンケート、ユーザー行動観察、課題想起を行い、ユーザーの顕在/潜在課題やニーズの把握を通して、新規事業アイデアの創出を図る。
強みを活かす 自社経営資源を洗い出し、強みとして活かせる新規事業アイデアを検討する。
他業界モデルを類推する(アナロジー) 他業界、世界での成功モデルをベンチマークし、同モデルの応用ができないか、新規事業アイデアを検討する。
競合差別性を掘る ターゲット業界における競合、あるいは代替サービスのベンチマークを行い、差別性を実現できないか、新規事業アイデアを検討する。
バリューチェーンを壊す ターゲット業界における全体のバリューチェーンをベンチマークし、業界課題を解決できないか、新規事業アイデアを検討する。
あるべき姿を描く 業界の商習慣、当たり前のビジネスモデル等の前例を払拭し、ゼロベースであるべき姿を描き、その現実との差分から新規事業アイデアを検討する。
社会変化を予測する 人口動態(年齢、世帯構成等)、PEST情報から、5-10年後の世の中を予測し、その社会変化の中で新規事業アイデアを検討する。
社会課題を解決する 少子高齢化、ソーシャルビジネス、貧困、ニート等の多様な社会課題に対して、自身の意志/哲学も含めて、あるべき社会、新規事業アイデアを兼とする。

顧客を想起する

対象となるユーザーになりきったり、想起したり、行動観察したり、あるいは意見を聞きながら課題を発見しその解決方法を考察します。特に自分マーケティング(自分が顧客として自身の課題/ニーズからアイディアを考える)で考えて行くのは一番取組みやすい切り口だと思います。

また、課題等のネガティブポイントを発見するだけでなく、今よりも便利、楽しいなどポジティブな感情に昇華させることはできないか、と考察することもできます。

強みを活かす

自社経営資源を洗い出した上で、同経営資源が活きる、強みになるアプリケーション(用途)はないか、と考察していきます。注意すべきは、経営資源の洗い出しをする時、ついつい「当たり前」と考え機械的にやってしまわないことです。当たり前だと思いながら自社資産の洗い出しを行ってもあまり有効な発見ができないです。

「既存事業では当たり前だが、他業界では強みになるのではないか?」といった、強みを「発見しよう」とする意識で見つめ直すことが重要になります。

他業界モデルから類推する(アナロジー)

他の業界で急成長した会社や、狙いたいビジネスモデルを実現している会社、あるいは海外のユニークな会社などをベンチマークしながら、自分たちがよくわかっている業界/市場の中で活かすことができないか、と類推・考察します。

この切り口は、ついつい業界で長く仕事をしていると、と「無理だ」と最初から考えがちなので、過去の経験や常識をできるだけ取り払う意識が重要だと考えています。

競合差別性を掘る

狙いたい業界がある場合、その業界における主要プレイヤーを徹底的に分析し、競合あるいは代替サービスがやりきれていない分野や、自社経営資源を活用したら勝てないか、と考察していきます。先に何らかの理由で業界等を特定しておかないと全業界で同じ作業をするといった膨大な労力を要するプロジェクトになってしまうので注意が必要です。

収益性や、親和性、競争環境等で絞り込む、狙いたい業界等の前提をおいた上で、攻撃する事業者を決めて分析するのが効率的だと思います。

バリューチェーンを壊す

こちらも同様に参入したい業界が特定されていて、同業界や、主要プレイヤーのバリューチェーンを調査し、そこに無駄があるか、モジュール化させることで占有を崩せるか、ビッグデータなど横断させることによる新たな価値が創造出来るかといった観点で分析、考察していきます。

特に規制がしっかりしている業界ほど、そのバリューチェーに無駄があるケースが多く、緻密に仕込まれたイベントでがらりと構造がかわったりしています。iPhone、Google、LINE等は他にはないユーザー価値と、このバリューチェーンを壊した最たる例かと思います。

あるべき姿を想像する

映画の世界のように自由にあるべき姿、近未来を想像していきます。想像力豊かな、天才肌の方には有効な切り口だと思います。ただ、ブレインストーミングなどチームでアイディアを議論している場合、周りがついて来ることができない、といった場面も遭遇する時もあります。

社会変化を予測する

人口、年齢構成、家族構成、GDP、成長率、政府の方針など、マクロ的な動向を踏まえ、5年後、10年後社会がどうなっていくか、あれこれ予測しながら、新規事業としてどのようなものがあり得るか考察していきます。

社会課題を解決する

オールジャパン、グローバル視点で社会課題を考察する、あるいは自身の意志/哲学から世の中の向かう方向について考察し、同課題解決等ができる新規事業アイデアを抽出します。ソーシャルビジネス、少子高齢化、ニート…等多様な社会課題は存在しており、そこに本気で取り組みたい意志を掛けあわせ、事業としての機会を探っていきます。

※先日インタビューにてコメント頂きましたこちらの記事も参照ください。
新規事業ブログ:「立ち上がる新規事業とは」(株式会社オプトベンチャーズ  代表取締役 野内敦 氏)

アイデア抽出の訓練

また、「仮説をもつ」日常的な訓練を行うことも、切り口を知る以上に重要だと思います。
好奇心をもって色々な情報に触れ、「何故だろう」「自分だったらXX」「習慣化されているが、もっとXXできないか」「この商品/広告は、誰向けなのだろうか」…あらゆる所に、ちょっと変ではないか?こうした方がよいのではないか?と発見し、思考・想像のスイッチを押すことを習慣にします。この行為を繰り返すことで、仮説構築能力あるいは問題発見能力自体が高まっていきます。

ついつい、通勤等の日常の行動では思考を休めてしまう傾向にあると思いますが、関心をもって世の中を見て仮説を持つということを心がけるだけで訓練になります(いつもやっていると、本当に疲れてしまいますが)。更に、その仮説は、考え直したり、創造力のある周りの方と議論することで、精度(仮説構築能力)が高まります。社内のメンバーに対し言い続けてきた結果思うのは、学歴関係なく誰にでも訓練によってその能力は確実に高まります

※具体的には、RODIAのメモ帳を懐にいれ、日頃から思考メモをとり、見直すという習慣をつけろ、などと言っています。

こうした、アイデア抽出の切り口を知り、仮説構築の思考訓練を図ることで、少なくとも企画・計画フェーズにおいて新規事業アイデア・「ネタがない」という状態は避けられます。

最後に、前回記事:新規事業の取り組み方?戦略的“不真面目”のススメにも記載させて頂きましたが、企画と実行は双方が重要であり、且つ不確実性の高い新規事業をやりぬく為には、諦めない覚悟が非常に重要だと考えています。
覚悟をもって事にあたる為にも「コア仮説は自身で考察」していくことが非常に重要だと思います。

会社の新規事業としてオーソライズがとれなかったプロジェクトでも、やる気のある担当者が社内で堅い意志を持ち隠れて進めていき、大きく成長して後に注目されるといったケースも拝見します。その意味ではむしろ、アイデアの面白さよりも、やる気や、実行フェーズでの試行錯誤の方が重要なのかもしれません。

次回、「実効性のある新規事業アイデアに困らない方法 ? 実行編」にて、真に重要である実行フェーズでの新規事業アイデア創出方法について言及できたらと思います。本稿記載の企画・計画フェーズでのアイデアは、あくまで初期仮説でしかなく、それ以上に、新規事業の実行フェーズでの新規事業アイデア抽出活動(試行錯誤、創意工夫)こそが重要であり、真に実効性のある新規事業アイデアであると考えています。

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