事業計画をどう作成するか?(1)

N氏の事業計画書

「事業計画書を作成しないといけないのですが、 うまくかけません。この間の経営会議で役員に『まったく魂が入っていない。』と怒られてしまいました。よく分かってもいないのに、ああいう抽象的なこと言われても困るんですよね。そう思いません?」 と製造業N氏。

確かに事業の内容や現場の状況を理解しようともせず、とにかく部下からの提案には何か言っておかないと、社長の手前威厳が保てないと考えて、とりあえず発言するというケースもないとはいえません。

ただ、このケースはNさんもスタート地点を間違えているようです。

何のために作成するのか考える

まず「何のために事業計画書を作成するのか?」を十分に考え抜いたのか、怪しいところです。
「いや、だから経営会議を通すためですよ。」
実際には、このような反論があったのですが、この答えをみても上記の質問について十全に考えをめぐらせたようには思えません。

「事業計画書は何のために作成するのか?」

この質問の答えとして返ってくるのは、「○○を説得するため。」というのがほとんどで、○○には上司、経営陣、社内ベンチャーの諮問委員会、ベンチャーキャピタリストなどが入ります。ただ、共通しているのは外部の人を説得、納得させるために作るという点です。

自分に向けて書く

当たり前のように思えて、ほとんどの場合忘れられがちなのですが、事業計画書というのは他人に事業の内容を説明し納得してもらうという以前に、まず自分に向けてきちんと書くべきものです。

自分に向けて書くというのは、事業計画を書く人は基本、事業実行のリーダーでもあるべきです。そうであるなら、事業計画書は事業の決済をとるためのものではなく、必要に応じて見直し、書き換えして実務の中でも使えるべきものなのです。

もちろん、打ち出すポイントや言葉遣いまでが全く同じ必要はありませんが、その骨組み自体は他人に見せるものと自分の道しるべにするもので同じでないといけません。

事業計画書は宣言書である

Nさんの場合、自分が実行するに当たって見取り図という視点が欠けていたため、役員からすると『お前、すごくばら色の未来ばかり描いているが、本当に責任持ってやり遂げることができるのか?』という意味で「魂が入っていない」という発言につながったのです。

実際にNさんが経営会議に上げた事業計画書を見せていただいたのですが、顧客視点が十分でないビジネスモデル、典型的な右肩上がりの売上グラフ、甘いコスト見積もりの財務シュミレーションという内容になっていました。

これは、Nさんに事業計画書を書くスキルや能力が足りなかったという問題ではありません。
自分が事業を構築していくリーダーであり、事業計画はその実行についての宣言書でもあるという視点が弱かったのです。
もしその点が本気で考えられていたとすれば、2年後にシェア95%を取り、そのためには熟練技能者を半年で200人採用しないといけないような計画は怖くて書けなかったに違いありません。

次回はNさんの反論も踏まえて、さらに具体的な内容についてご紹介したいと思います。

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