新規事業TIPS vol.3) 実効性のある新規事業アイディアに困らない方法(2) -実行段階

前回のブログにて、企画・計画段階での新規事業アイディア抽出の方法について記載させていただきました。
では、その実行段階で新規事業アイディアをどのように検証し、どのように創意工夫していくのか? 1)前提の考え方、2)実行段階でのアイディア抽出方法について記載させていただきます。

1) 新規事業に対する前提の考え方 〜 やる気

大手企業の新規事業案件を数多く手がけさせていただく中で、改めて重要であると考えているポイントがあります。
それは、平易な言葉で言うと、新規事業企画に対しての「やる気」、「覚悟」にあると考えています。

多くの新規事業提案(社内ベンチャー)制度が、新規事業アイディア/企画/計画の良し悪し「のみ」を評価しています。また、多くの新規事業に関する書籍もよい企画・計画を作成する為の方法論/枠組みについて論じられています。
しかし、当方は、むしろアイディアの内容だけでなく、「やる気」「覚悟」も重要視されるべきだと考えています。

やる気が不十分な方が新規事業を担当され、その課題に直面すると、道半ばで簡単に諦めてしまうケースを見てきました。しかし、課題がなく、全てが想定通りに進む新規事業は皆無です。
逆にやり切る気持ちを強く持っている方は、課題に直面した時に何とか乗り越えようと、利害関係者に熱く説いて周り、課題を乗り越えていくケースも見てきました。

新規事業アイディアが、各種困難の中、検証されながら形になっていくものであることを考えると、その不確実な困難を乗り越える唯一の原動力は、「やる気」にあると言えます。新規事業企画の実行段階において、そのやる気を前提に試行錯誤並びに創意工夫をし続けることが重要になってきます。
*後日、同考え方を前提にした新規事業提案制度についても記事を書かせていただきます。
*関連記事「新規事業の取り組み方 〜 戦略的不真面目のススメ」

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では、その実行段階での創意工夫はいかにして進めていくべきでしょうか?

2)実行段階における新規事業アイディア抽出方法

企画段階の新規事業アイディアは、以下ステップで試行錯誤を行い、新規事業アイディアの改善を図り続ける必要があります。この実行段階での試行錯誤は、地道な努力が必要とされ、やる気がないと心が折れてしまう場合が多いです。

「やる気をもって新規事業企画を試行錯誤する」と申し上げているとはいえ、根性論で「とにかくやってみよう」というのは、得策ではないと考えています。実行段階においてもしっかり検証設計・計画を策定した上で、試行錯誤を行うことが肝要です。

・ステップ1: 新規事業の因数分解と優先度

新規事業アイディアの検証設計は、主にビジネスモデルを因数分解(要素にわける)し、検証ポイントについて優先度をつけた上で検証することをおすすめします。
新規事業を戦略・施策面、ビジネスモデル面、営業・マーケティング面等で因数分解した上で、各施策の是非を検証していく必要があります。
*より具体的な方法論は、後日記載していきます。

例えばビジネスモデル面の分解の場合、ビジネスモデル要素/機能を個別に分けていき、ユーザーへの提供サービスとその対価の大きさを書きだしていきます。どの機能が、一番ユーザーに魅力的でお金を払って頂ける価値だと考えているか明確にします。

特に、ターゲットユーザーに提供サービス/価値が受け入れられるのか、という本質の見極めが新規事業の立ち上がり段階では重要です。その後、そのユーザーを集客するにはどうするか、ユーザーが増加した時の運営業務・体制をどうするか等の観点でも分解し、施策の是非を検証していきます。
また、不確実な新規事業において全てを設計しきることは困難な為、一定の「無駄な努力」を許容できる寛容さがマネジメント側に必要になります。

・ステップ2:イベント(事件)/異常値への注視とその要因把握

各施策は、効果があるのか、ないのか、検証できる環境を準備しておく必要があります。その検証データ(サイトログ、購買データ等)を毎日確認しながら、想定と異なる異常値を発見していきます。
新規事業の立ち上げ当初は、何かと想定外の事件が発生します。しかし、その対応に追われるだけでなく、何故起きたのか、しっかり要因を掘る必要があります。
新規事業では人出が足りない中で立ち上げていくケースが多く、サービスを更新し続ける、クレームなどの顧客対応をする等、基本的な事業を回すことで一杯一杯になりがちです(自戒含めて)。しかし、半年・一年は、寝る間を惜しんで、異常値の発見とその要因の考察を粘り強くやることが極めて重要だと思います。

要因が考察できれば、その対になる、解決策・改善施策案も見えてくるものです。

・ステップ3: 新規事業企画・改善案の抽出

新規事業を具現化させ、その成功に向けた創意工夫並びに試行錯誤は、真摯に事実を見て、要因を探り、以下視点で改善案を考察していきます。
ここには正直、飛び道具はないです。ユーザーの動き、他社の動向、あるいはベンチマークを図りながら、具体施策・戦術レベルで細かい創意工夫を図ります。

・ユーザー/クライアントに価値提供できているか
・ユーザー/クライアントに我々の提供価値を認知/理解してもらっているのか
・他社ではなく、我々のサービスを選んでもらえるか
・他社施策/他業界施策は何故うまくいっているのか
・組織は、目標に向かって一丸となって動いているのか
・同様のミスが何故繰り返し起きるのか
・当初、全て人力で対応したが、より効率的に作業を進める方法がないか

等の観点で、想定外事件・異常値の「要因と対策案・改善案を抽出し続け」ていきます。
一回改善したから終わりという話しでもなく、継続的にこのステップを繰り返していきます。

実際、新規事業が立ち上がった後、少し期間がたつと「慣れ」てしまい、事実をしっかり見るという意識が薄れてしまうケースがよくありました。
やる気をいかに維持しつづけるか、
それは本人の問題だけでなく、組織・運用面での工夫も必要になります。
定期的に上司や、外部の監査機関が相談/進捗管理を行っていく(課題指摘を行っていく)体制は、緊張感を保つ意味で重要になります。
新規事業の成功、1stユーザーの獲得、各種目標値を越える等の達成感の裏には、上記を実行し続ける為の「持続的なやる気の維持」と、「地道な」改善努力の積み重ねが、必ず存在します。
企画段階での新規事業アイディアもそうした不断の努力が加わって始めて、価値として世の中に受け入れられ、新規事業としての評価対象になると考えています。

*関連:「新規事業の定義 〜 新規事業とイノベーションの違いを理解する」

*前編:「新規事業TIPS vol.3) 実効性のある新規事業アイディアに困らない方法(1) – 企画段階」

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