異業種同士で畜産課題に挑戦—2016年10月新規事業トレンドレポート

新規事業の動向を月次でお届けするレポート。
2016年10月、PR TIMESを中心に新規事業関連記事をリリースした企業を業界別に分けたものが以下の表になります。

2016年6月:新規事業をリリースした企業(業界別)

IT・情報通信が42%、続いて生活・サービスが34%となっています。
リリースが最も多いIT・情報通信分野の内訳をみると、通信サービスが55%と過半数を占め、ソフトウェアが37%と続きます。

2016年6月:IT・情報通信企業の内訳

トヨタ×メニコン:異業種の組合せで畜産の課題にアプローチ

今月の記事で特に気になったトピックを紹介します。
2016年10月5日、トヨタ自動車とメニコンが畜産向け堆肥化促進システムのシリーズ「resQ45(レスキューヨンジュウゴ。以下、resQ45)」の新商品「新特別急酵 液体」を共同開発し、トヨタの子会社・トヨタルーフガーデンが豊田通商のルートにて販売を開始しました。

悪臭や水質汚染、地球温暖化の要因とされる温室効果ガスの発生等引き起こす家畜排せつ物は国内で年間約8,000万トン発生しており、兼ねてから適切な処理や有効利用が求められていました。そこにアプローチする形で開発されたのが新特別急酵液体の前身で、2013年から発売している粉体状の「新特別急酵」。家畜排せつ物に散布することにより、堆肥化期間の大幅な短縮(約 1ヶ月→約2週間)および悪臭源となるアンモニアガスの大幅削減(従来の約50~90%減)を実現していました。しかし、処理量の多い大型農場の堆肥化作業において粉体状の散布は手間を要することから、今回の新特別急酵 液体開発に至ったといいます。

液体化の利点は大きく3点。既設の液剤散布器を使い、まんべんなく確実な散布が可能となる点、作業の効率化と安定した堆肥づくりができる点、そして保管スペースの縮小化の実現が可能となる点です。畜産農家の課題・ニーズを満たしつつ、作業負担および環境負荷の軽減にもつながっています。

2006年より家畜排せつ物の課題解決に向けresQ45シリーズの開発・販売を始めた両社ですが、なぜ共同開発を行うことになったのでしょうか?一見、両社とも畜産関連のバイオマス技術について特に強い印象があるわけではありません。しかし、いずれも自社の商材の研究開発から得た知見や技術を生かし、上手に新規事業とした結果によって畜産関連のバイオマス分野で成長してきています。

たとえばトヨタに関しては、自動車関連のエネルギーからバイオマス研究を始め、トータル27年の知見や技術を蓄えるまでに。メニコンもコンタクトレンズ・ケア用品の開発で培った技術を環境事業分野に活用しており、売上比率では2%以下ですが、新規事業として力を入れています。resQ45シリーズとして新特別急酵に加え、「豚レスキュー」や「モーレスキュー」など取り揃え、本年4月に累計売上20万袋を達成。本年度は年間5万袋の売上を計画しているとのこと。

トヨタとメニコンに加え、豊富な販売ルートをもつ豊田通商は連携をさらに強化。新たな環境事業の発展や農地の土壌改善に貢献すると共に、資源循環型社会の実現を目指す姿勢を示しています。

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