新規事業とコンサルティング(2)
新規事業コンサルティングの失敗例
新規事業におけるコンサルティング失敗の典型例が、 高いお金を支払っていろいろと調査したにもかかわらず事業に進展がみられないというものです。
こうなってしまうと担当者は上司や経営陣から、「一体全体どうなっているんだ!」と叱責されることも多く、できることならプロジェクトはなかったことにしたい、もう関わりを持ちたくないと思いつめてしまいます。
このパターンで今まで経験した最も大変なケースが
- コンサルティングフィーとして2億円を投入し、
- まるまる1年半かけて、
- 10,000ページ以上の報告書を作ったにもかかわらず、
- 全く進まなかった。
- 結果、上層部の逆鱗に触れ担当部署が丸ごとなくなってしまった。
というもので、プライマルは新しく出来た部署からこの辺りのお話をきくことになったのです。
立ち上げようとしていた事業は大掛かりだったので、失敗も大きくなってしまいました。
大きな会議室のテーブルに積み上げられた、タワーのようにそびえる分厚い報告書の印象は鮮烈で、いまだに忘れられません。
内容についても少しだけ教えていただいたのですが、緻密で、抜け漏れなく様々な課題が検討されており、そこに描かれたグラフやマトリクスも素晴らしく美しいものでした。
ではなぜこんなことになってしまったのでしょうか。
失敗の要因
よくよくお話を聞いてみると、実際にはお客も、パートナーも全く掴めていなかったにも関わらず、美しい資料と流麗なプレゼンテーションにうっとりと酔いしれているうちにプロジェクトのメンバーもなんだか事業がすすんでいるように錯覚してしまったようなのです。
我に返ったときには、競合が先行して新しいサービスを発表していました。
“先生と生徒”の関係
元プロジェクトメンバーと話をすると、いくつかの反省が出てきました。
よくよくお話を聞いてみると、実際にはお客も、パートナーも全く掴めていなかったにも関わらず、美しい資料と流麗なプレゼンテーションにうっとりと酔いしれているうちにプロジェクトのメンバーもなんだか事業がすすんでいるように錯覚してしまったようなのです。
我に返ったときには、競合が先行して新しいサービスを発表していました。
元プロジェクトメンバーと話をすると、いくつかの反省が出てきました。
- 「(コンサルタントへの依頼は)上が決めたことなので、(コンサルタントを)先生として処遇してしまった。」
- 「ハードな交渉や泥臭い作業がなく、きれいにまとまるので気持ちよくなってしまった。」
- 「世界的に名の知れたコンサルティング会社だったので、おかしいなと思っても口を挟む勇気がなかった。」
- 「戦略的には正しいと今でも思っているが、実行するという部分がしっかり考えられていなかった。 少なくとも我々には実行できない計画になっている。」
これらの発言に見られる関係は、イコールパートナーのそれではなく、“先生と生徒”の関係です。
先生の言うことだから当然だと思っていた。
先生の言うことには逆らえなかった。
先生の言うとおりやろうとしたができなかった。
知識として学ぶだけであれば、このような関係でも良かったのでしょうが、新規事業は実践です。戦略や計画は、実行され、事業として立ち上がり、利益を生み出すようになって初めて意味があります。
コンサルティングを受け入れる秘訣
そのためには、先生のいうことに唯々諾々と従っている優等生ではダメなのです。 自分で考え抜き、行動した上で、イコールパートナーとしてのコンサルタントを求めないと新規事業のような総力戦を勝ち抜くことは出来ません。
コンサルティングを、ただ崇め奉るのではなく、「たかがコンサル、されどコンサル。」という風に考えるべきです。
もちろん”されどコンサル”ですから、「金を払ってるんだから、上まで提案が通るように、こっちの言うとおりにきれいな絵を描いてりゃいいんだよ。」というように、下請けをあごで使うような態度も賢明ではありません。
コンサルタントがいくらプロフェッショナルといえども、そこは人の子、十分な協力や支援が得られなくなります。
このバランスを保つことが、コンサルティングを受けるにあたって、最大の秘訣かもしれません。
タグ: コンサルティング, 失敗要因