新規事業を成功に導く魔法の杖はあるか?(1)

2007.01.22

新規事業の風向きの変化

イノベーション、新規事業、事業開発、新商品企画、MOT、などなど。
最近これらの言葉を、クライアントと話すときにも耳にするようになり、書籍やネット上でも見かけるようになった。
バブル崩壊後、選択と集中の掛け声のもと事業の絞込みが経営の中心に据えられた時期が続いたが、最近になり、イノベーションや新たな事業作りについて改めて、声高に語ることができる状況になってきたらしい。

プライマルとしても新規事業立ち上げのコンサルティングに関わり6年になるが、風向きが明らかに変わったように感じている。

資本主義の世界的に広まりにより新興国が勃興し、市場としてお客となると同時に、競合としてより競争をはげしく複雑なものへと変質させた。また、市場を形作る顧客たちはインターネットの普及により、大量の情報を瞬時に持てるようになり、より要求の多い賢者へと変貌を遂げている。

これらの変化により、単なる事業の改善だけでは競争に勝ち抜き利益を得ることが難しくなっている。
既存ビジネスにおいても絶え間ない創造的、抜本的変革が求められ、新たなビジネスを作り出していかない限り生き残れないようになってきているのだ。

成功と失敗

手がけたプロジェクトの中で、我々は様々な業種の新規事業に関わった。その経験には、成功した新規事業も失敗した新規事業も含まれている。
それらは、なぜ成功し、失敗したのか?
後から振り返ってみると、最初からいい加減に進めており失敗すべくして失敗した事例もあれば、万策尽きたと思えたのに偶然によって大逆転した事業もある。そういうこともあり、新規事業には運が必要だといわれることも多い。

ただ、過去の事例を一つ一つ丹念に腑分けしていくと、そこには成功に少しでも近づけることのできる手法があったり、それをやっては、あるいはやらなくては必然的に失敗してしまう法則があったりすることに気づく。運だけですべてが決まるわけではないのだ。
イノベーションや新規事業において必勝法的マニュアルはそもそもないのかもしれない。それでも、新たな取り組みの成功確率を上げるやり方、あるいは失敗確立を下げる手法というのは確かに存在するのだ。
それはどのようなものか?
過去の事例をひも解きながら、新規事業のコツについて考えてみたいと思う。

新規事業の定義

まず簡単に、新規事業という言葉を定義しておきたい。

ここで論じる新規事業には、いわゆる徒手空拳からはじめる起業、ベンチャービジネスはこれらの対象には含まれていない。ある程度の基盤やリソースを持つ企業体が事業、商品、サービスを新たに始めることを新規事業と呼ぶことにする。

なぜ最初に言葉の定義などという、堅苦しい話からしなければならないのかといえば、まっさらな状態からはじめる起業/ベンチャービジネスと異なり、ある程度の規模や歴史を持つ企業が新規事業をはじめるにあたって最大の障壁が既に存在している事業、いわゆる既存事業だからである。そういう意味で、いわゆるベンチャーが味わう苦労や危機と、既存の企業が始める新規事業(社内ベンチャーと呼ぶことにする)の間には異なるところが少なからずあるのだ。

既存事業は障壁になりうる

既存事業を持っていることこそがいわゆるベンチャービジネスとの最大の違いであり、障壁になりうるという事実はある意味驚きである。こういう話をすると、ベンチャー起業家たちから「何を贅沢な、それぐらいなんとでもなるだろ。」「リソースがある大企業こそうらやましい。」という声が聞こえてきそうである。しかし、実際に企業の現場で事業を起こし進めていくときにあらゆる面で、最大の敵にもなりうるのがこの既存事業なのである。

それは別に、既存事業部のメンバーが新規事業メンバーの邪魔をしたり、足をひっぱったりするということだけではない。(実際には、「あいつらは俺たちの稼いだ金を使って、ノルマもなく好き勝手やってて面白くない。絶対協力しない。」みたいなこともあったりするのだが。)

例え既存事業が成功していても、そこで築き上げられたあらゆるものが、むしろ成功の原動力となった手法や考え方それこそが、成功の復讐として新規のビジネスに襲い掛かってくるのである。

だから、この点については重々心しておくべきである。社内ベンチャー/新規事業のためのスタートから、しっかりと意識して事業構築に取り掛かることが、最初にして最大の成功への鍵、いわゆるKFSでさえあると考えてもいい。

一方で、既存事業を敵に回すことなく、うまくリソースとして活用できた場合はどうか?

当然、まったく何もない状態からはじめるベンチャー事業より有利になることは言うまでもない。いわゆる経営リソースといわれる、ヒト・モノ・カネに加えて、ネットワークやノウハウなどの様々な無形資産も持っているはずである。

これらを有効に活用し、成功の復讐を受けなければ、鬼に金棒である。事業の成功に一歩近づいたといえる。そのためにも、既存事業との兼ね合いについては、普通の起業と違い十分に考え、行動する必要がある。

そしてそれは、事業のアイデア出しの段階でも、新規開発チームを作るときも、事業計画書を立てるときにも十分に反映される必要があるのだ。

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