新規事業を成功に導く魔法の杖はあるか?(3)

2007.01.26

新規事業を進める体制

新規事業の検討を開始するに当たっては、何はともあれプロジェクトチーム(PT)を結成する会社が多い。

そのまえに、事業企画室、事業開発室や新規事業部などスタッフ部門として作る会社もあるが、いきなり組織を作るのはなかなか難しい面もあるし、その次のステップとして、やはりプロジェクトチームが組織される。

その理由としては、下記などがよく挙げられる。

  • 必要なスキルをもった人材が部署をまたいで存在している。
  • やる気ある人材も様々な部署に散在している。
  • 既存事業との切り離しができる。
  • 目的、期限などをはっきりさせることができる。

プロジェクトチームという呼称は、会社によってクロス・ファンクショナル・チーム(CFC)やタスクフォース(TF)という風に言い換えられることもある。それぞれ実態は似ているのだが、強調したいポイントは微妙に異なっているようだ。

プロジェクトチームはある一定の目的(プロジェクト)に、期限付きで取り組むというところがポイントになっているし、クロス・ファンクシャナル・チームは呼んで字のごとく、異なった機能(ファンクション)を持った人々が集まるという点が強調されている。タスクフォースは字面からはプロジェクトチームとあまり違いが読み取れないが、実務の現場ではより時間の意識が高い、つまり緊急性の高いプロジェクトに用いられたり、メンバーが少人数で全員専任であることが多い。軍隊に例えれば、特殊部隊的なイメージがある。

このように見てくると、チームができる上でいくつか考えなければいけないポイントが見えてくる。

  • 目的:何を最終目的とし、そのためのマイルストーンをどう設定するか?
  • 期限:期限をいつに設定し、進捗をどう管理するか?
  • 機能:どのような機能が必要か?
  • 関わり方:どのていどの人工が必要なのか?

これらのポイントについて、意思決定するためにはチームにリーダーが必要である。チームはリーダーとメンバーの2種類の人間しかいない。そうなれば、チームにとってリーダーを決めるというのはとても大切なことであることは論を俟たないであろう。

そんなの当たり前と皆さんも思われるかもしれない。ところがどうして、まずここで躓いてしまうことが多いのである。しかも、ここでの躓きは致命的だというにもかかわらず。

A会社の事例

A社は伝統的大企業であり、古きよき日本の会社が持っていた年功序列的な風土をいまだ保っている。
一方で、新しい領域への進出や、新事業の開発を求められており、多くのプロジェクトチームや子会社を抱えていた。

しかし、大半がうまくいかなかった。

その理由は複合的なものなのだが、一つ大きな理由としては各チームにリーダーがいなかったからである。

なぜ、そのような事態が起きたのか?

人材がいなかったわけではない。むしろ周囲からは、人材輩出企業として、羨まれていた程である。
この会社では、「子会社の社長は参与以上でなければならない」とされており、しかも参与になるためには50歳以上であることが暗黙の了解として求められていたのである。

そのため、一人の部長が10社以上の代表取締役を兼任したり、プロジェクトチームをひっぱってきた若く優秀なリーダーが、子会社にする価値のあるプロジェクトだと認められた瞬間に、交代の浮き目にあったりした。

社長はおかざりだといってみても、やはり社長がやらねばならない仕事というのは数多くある。
どうあがいても、10社兼任など土台無理な話で、すべての会社に対してのコミットメントが中途半端になった。

しかも出向者はある程度事情が飲み込めていたが、プロパー社員からすれば、本社はやる気がないとしか思えなく、全体の士気も下がりがちであった。

また交代を求められたリーダーは、取締役にさえなれず、失意のうちにプロジェクトを去ったり、ともすれば会社を辞めて、自分で同じ事業を立ち上げたりした。立ち上げの時期に、早くも競合を生んでしまったのである。

これではうまくいくものもうまくいかない。既存事業でうまくいってるやり方をそのまま踏襲したために、散々な結果に終わった事例である。

このように、当たり前のように思えても、既存事業のしがらみを断ち切れずに失敗する例も結構あるのだ。

新規事業を失敗させないためは、既存事業との距離感をうまくつかみ、既存の制度を壊さず、しかしおもねらないやり方が必要なのである。

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