映像コンテンツ配信市場はブレイクするのか?(2)

2007.01.09

音楽配信サイトの成功要因について

音楽配信がブレイクしなかった主なサービス上の欠点としては、

  • 高い
  • 曲が少ない
  • 音が悪い
  • コピーに制約がある

などがある。

iTunesストアや着うたフル®の成功事例から、それら欠点をどうのり超え、サービスが広がったかをみてみる。

iTunesストア

iTunesストアは、日本では爆発的というまでには広がっていないが、ワールドワイドでは1日に400万曲以上を販売するナンバーワンのデジタル音楽販売サイトとなっている(ちなみにデジタル動画も1週間あたり100万本以上販売している)。

iTunesストアの成功要因としては、アップル社の作ったハードがとても売れたことと、iTunesのプレイヤーとしての機能がすぐれていたことが、ミュージックプレイヤーとしての普及を大きく推し進めた。

また、ジョブス氏のトップ交渉によるメジャーレーベルからの楽曲提供(全世界で350万曲の提供)と、安価な楽曲価格設定と全曲視聴が可能なことが非常に大きかった。「いいものをたくさん安く提供する」という商売の基本が守られ、かつ、ミュージックプレイヤの普及によりユーザーリーチにも事欠かなかったことが、ストアとしての成功をもたらしたといえよう。高い、曲が少ないといったことが解決されただけではなく、既存のCDショップよりも、現在では豊富な品揃えになっている一方、アーティストベースの作品・商品の見せ方(当該アーティストの売行き順に曲を表示する「トップソング」や関連購買リストが提示されたりする)やプレイリストなど、音楽との「出会い」に対してよく配慮がなされている。音の質については、MDの普及時と同様、大多数にとってはそれほど気にならないということだろう。また、コピーに制約があることについては、CDに焼くことが可能など、特にサービス開始当初は競合対比でかなり緩めの設定となっていた。

着うたフル®

日本における音楽配信の成功ケースとしては、着うたフル®がある。着うたフルは、iTunesストアとは反対に、

  • 高価格で楽曲数も少ない
  • コピーも制約が非常に大きい

という一見、ユーザーが不満を持ちやすいサービスでありながら、日本では非常に大きくなってきている。これは、もともと有料課金による購入が前提となっていた携帯の着メロ®から、着メロ®⇒着うた®⇒着うたフル®という流れにのって拡大していった面が大きいだろう。つまり、携帯で音楽を購買するという行動が既に習慣としてユーザーに定着していたのだ。

また、女性の利用比率が高くなっていることから、AV機器などの細々した設定やファイルのやり取りを嫌った層が気軽に利用していることが考えられる。

米国と日本の違い

その一方で日本におけるPCの音楽配信に関しては、あまり規模が大きくなってはいない。これは、音質・コピー制約の条件は着うたフル®と変わらないのだが、

  • 主要な楽曲の価格設定が200円程度と諸外国より高い設定になっていること
  • サービスの競合として、レンタルショップ(アルバムを300円で借りると、1曲あたり30円程度)が広く存在すること

などが原因として考えられる。

米国ではすべての楽曲が1曲99セント(115円相当)で購入できるし、レンタルショップは日本ほどは存在していない。携帯電話における着うたフル®が成功しているからといって、PCサイトでの配信が成功するわけではないといえる。携帯電話では着うた®として利用できるし、端末自体がプレイヤ・決済端末(携帯キャリア請求書による一括請求)としても機能しており、1台あればサービスの利用が簡潔する簡便さが受けていると思われる。あるPCの音楽ダウンロードサイトは、1曲購入するたびに決済情報を入力するという非常に面倒なことになっていたが、それだけでサイトから足が遠のくことになっても不思議はない。

日本でのPCサイトにおける音楽配信を活性化しようとした場合は、機能の利便性を追及するとともに、価格の見直しは必須になってくると思われる。タワーレコード社が月額定額制のサービス(Napster)を開始しているが、楽曲ラインナップがきちんと揃うことが当然成功のカギになる。ラジオ型の無料モデルは、CD・ダウンロード販売のショッピング収益とサービス提供サイトのID獲得を狙いにしていると思われるが、コストを考慮すると、相当のボリュームと高いコンバージョンがない限りビジネス的には厳しいだろう。

日本での現状

日本では、そもそも音楽業界自体の置かれた環境が非常に厳しい。マクロの環境要因として、音楽を多く購入する層?特に中高大の学生?が減少していることが音楽業界にとっては大きなマイナスである。また、彼らがエンタメ関連に自由に使えるお金は、平均1万?1万5千円程度であると思われるが、半分の6千円?8千円は携帯電話に消えていると考えられる。

携帯電話は毎月、確実にお金が使われるというのがミソであり、最近は減益傾向とはいえ業界全体で営業利益が1兆円程度はある。音楽業界のCD・レコードの売上高(…)が3,500億円強である。ケータイを捨てない限り、財布の空きは増えない。ケータイ以外の財布の空きは、女の子だったら服とか化粧品を買ってしまえば残りはあっというまに終わってしまうし、男の子だったらゲームや漫画に消えていくことも多いだろう。繁華街に出かけ、昼と夜飲食すればわずか1日で消費してしまうような金額しか残っていない。

このように「主要ターゲットの数が減る」×「ターゲットのお財布が一定割合携帯に確実に占拠されている」という、音楽業界に厳しい環境は、恐らくここ10年で大きく変わることはないだろう。

それを解決するには、音楽配信を含めたビジネスモデルの変革に挑み、多くのターゲットにアプローチするとともに、従来の若年層というメインターゲットに加え、中高年をセグメントした音楽を生み出していく必要があると思われる。

そもそも、ターゲットを切って音楽を生み出していく、という発想は音楽業界には乏しいように思われるが、「やたら青臭い歌ばかり出されても、、、」と思う層を積極的に攻略しなければ未来がないのもまた事実で、マーケットの縮小により、セグメンテーションを意識せざるを得なくなるだろう。

音楽配信が基盤を置くネットの世界は、SNS・ブログをはじめ、セグメントが細かくなればなるほど、効果を発揮するビジネスの舞台であるはずだ。ピンチをチャンスに変えるビジネスシステムは、案外近くに用意されているように筆者にはみえる。

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