事業開発(2)技術の提案

2008.12.26

前回は、「技術をアピールする」をテーマとした話をしました。今回は、これをより踏み込んで、実際に新しい技術を顧客に提案する方法について考えてみたいと思います。

ここで対象とする顧客とは、自社にとってまったく新しい分野であるとします。

既存顧客と新分野の顧客の提案内容の違い

通常、既存顧客に技術提案を行う場合はそれほど苦労をしないものです。技術そのものを持って行って、「これ何かに使えませんかね?」と聞くだけでよいからです。顧客のほうが、その技術が何に使えるのかを考えてくれることさえあると思います。これは少なくとも自分と顧客との間に最終製品に対する共通理解があるためであると考えられます。

しかし、まったく新しい分野の顧客への提案であったとしたらどうでしょう。「この技術何かに使えませんか?」と聞いても、新しい使い方が浮かび上がるはずもありません。これは、一般的な企業人は、既存の課題解決(つまり今ある製品をより良くする)に全力を挙げるものであり、何かあたらしいことできないかな?と漠然と思いをめぐらすような存在ではないからです。それに、そもそも先方には考える義理も無いという状況でしょう。

では、どのような提案を行えばよいのでしょうか?

”ライフスタイル”を提案する

それは、その技術を活用した「製品」と、それを更に進化させた「製品を利用するライフスタイル」を提案するということになります。

【MOT的技術提案の進化】

  1. 技術を紹介する。
  2. 製品を提案する。
  3. ライフスタイルを提案する。

このようなことを考えるのは社内のマーケティング担当や顧客側なのではないかという意見もありそうですが、実はこれができるのは技術の可能性を知る技術者だけなのです。マーケティング担当や顧客のほうは、「新しく何ができる」のかがわかりませんから、新しいライフスタイルについて思いつくこともできません。それに、先程も言いましたように、既存の課題解決に注力する存在であるため、「画期的な何か」についての意見は持ち合わせていないことが普通です。

プライマルでの事例(医薬品メーカー)

これはわたしたちプライマルのコンサルティング案件でも事例がありました。

そのプロジェクトは、ある画期的な材料技術を医薬品メーカーに活用してもらうための支援を行うというものでした。この材料を使うと、体のある部分の健康状態を定量的に容易に計測できるというものでした。医薬品業界ではこのある部分の健康状態というものは目視で判断するしかないという状況であったため、非常に画期的な技術として認識されるであろうと想定されました。

最初は、この材料技術を活用した測定機器を医薬品メーカーに提案しました。しかし、結果は惨敗であったのです。測定機器は非常に画期的であったはずですが、この医薬品メーカーにとって、機器自体は自身の事業範囲ではなく、ビジネス的な興味がまったく湧かないという状況であったのでした。

”ライフスタイル”の提案は技術者側から

そこで我々は、より踏み込んでこの測定機器が普及した後のライフスタイルを考え、これを提案したのです。この測定機器を使えば、ある部分の健康状態を指標化できる。消費者はこの指標に従って服用する薬の種類を変えることができる。そうすれば、従来に比較して薬の効果をより実感できるというイメージです。(例えば、日焼け止めも同じようなものです。昔は日焼け止めと言えば、一種類しかありませんでしたが、現在ではSPFという指標があり、これに基づいた多種多様な製品を使い分けるというようなことを行っています。)

このような提案をしてみて初めて医薬品メーカーさんにこの材料技術に興味を持っていただいたのです。

技術の紹介ではなく、製品の提案、それを超えてライフスタイルの提案へと進化させる。5年後、10年後にどのようなライフスタイルが実現されているのかを考える。

これができるのは、技術の可能性を知る技術者側であると考えています。

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