事業開発(3)オープンイノベーションと事業開発

2009.03.10

技術は普遍的に利用されているのではない

読者の方々は、「オープンイノベーション」と事業開発というものに対しどのようなイメージをお持ちでしょうか?

技術というものは普遍的に利用されるものであると思いがちですが、実はそうではないのです。ある業界では常識的に活用されている技術でも、別の業界ではそのような技術があることをまったく知らずに旧来のやり方で開発を進めている場合が多いのです。

オープンイノベーションに関する案件として、最近、プライマルでは医療・健康・美容等の業界における新規事業開発を進める機会がありました。
以前は、エレクトロニクスや素材等の伝統的な技術に関わることが多かったのですが、これら2つの業界を検討しただけでも技術の融合をキーワードとしたビジネスチャンスはまだまだたくさん転がっていると感じました。

業界で技術が完全に分かれている

かなり単純化すると、バイオ業界の技術はアナログ、エレクトロニクス業界の技術はデジタルと表現できます。これはどちらが優れているということではありません。それぞれの業界で技術が完全に分かれているということなのです。

例えば、人体に対する薬剤の効果測定という事象に対して両業界がどのようにアプローチをしているかが特徴的です。
バイオ業界における薬剤の効果測定は、「多数の被験者を集めて実験を行い、その効果の測定は顕微鏡で細胞を見て確認する。」というものです。この測定手法そのものが技術であり、アナログなイメージです。
これに対し、エレクトロニクス業界の研究者であれば、「薬剤によって体液中のイオンや分子の濃度が変化するはずだから、その変化を電気的な信号として取り出すことができれば効果がわかる」と考えます。つまり、事象をすべて数値(デジタル)で表現するというイメージです。

技術の交流を積極的にする場がない

しかし、それぞれの業界の研究者は、その自分自身が行っている手法を当然のものと考え、オープンイノベーションの視点での他の効率的な手法があるということをまったく知らない状況でした。
バイオ業界の研究者は、エレクロトニクスの技術を用いて何ができるのかを知らず、逆にエレクトロニクス業界の研究者は、自分たちの技術がバイオ業界において潜在的なニーズがあるということを知らないということなのです。

これはオープンイノベーションという考え方及び技術の交流を積極的に促進する場が無いということが原因でしょう。わたくしの経験からしても、大学の専門課程以降は他の研究分野についてはまったく勉強しなくなるものではないでしょうか。
(わたくしは、機械工学科出身ですが、大学専門課程以降は、化学やバイオについてはまったく勉強しませんでした。)

もし、このエレクトロニクスとバイオのそれぞれの技術の融合が図られ、オープンイノベーションが促進され事業開発が行われれば、新しい製品開発が生み出され、ビジネスチャンスとなるのではないかと想定しています。

オープンイノベーションは新たな価値を生み出す

弊社が扱ったオープンイノベーションに関するプロジェクトでは、先程の薬剤の事例のように、人体の観測を主に光学系の測定機器(一般的に非常に高価で大型の機械)によって行われてきたものを、半導体の技術を使った非常に安価で小型の簡易によって電子機器によって代替するというものがありました。
これは開発現場を一変させる新商品であると予想しています。

また、一般的にも異分野の知の融合により新たな価値を生み出すことの大切さは、オープンイノベーションに関する様々な書籍等で述べられています。
少し古いですが書籍「複雑系」のサンタフェ研究所の事例には興味深いものがあります。
(興味がある方は読んでみてください。)

このサンタフェ研究所のように半ば強制的に異分野の者が集められて議論をする場が作られれば、オープンイノベーションの観点で技術の融合と事業開発は可能であると思います。

しかし、それが自然発生的に生み出されることは現状難しいのではと想定します。営業やマーケティングの担当の方では、他の業界とのつながりを持つことができても、技術の融合という観点ではなかなか理解を進めることができずに拒否反応を起こしてしまうでしょう。それがオープンイノベーションを難しくしている要因でもあります。

逆に研究者の方は、専門性の高い技術に対する深い知識が逆に壁となり、なかなか他分野への興味を持つということが難しい状況となっているのです。

きっかけとなるのは研究者であるべき

しかし、このような状況においても、オープンイノベーションのきっかけとなるのは研究者であるべきだと考えています。
それは、研究者同士であれば、「お互いの研究に関する話をある一定レベルで理解でき、その技術の可能性がわかる」からであると考えます。

ぜひとも研究者の方には、自分の技術の他業界における事業開発の可能性について検討してみていただきたいと考えております。

オープンイノベーションのプロジェクトが増加してきている

最近は、弊社プライマルに持ち込まれるオープンイノベーション系のプロジェクトの中でも、「このようなことができる技術を知らないか?何とか事業開発の可能性を探索して欲しい。」というものが多くなっています。そしてその結果、驚くほどの成果が生まれる事例も出てきています。

次回は、この異分野の技術交流による新しいビジネスチャンスについて、具体的なオープンイノベーションを活かした事業開発の事例とその成果をあげるための手法を述べていきたいと考えています。

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