映像コンテンツ配信市場はブレイクするのか?(3)
前回までは、音楽配信サイトがデメリットを克服・回避し、強みを生かしてサービスを拡大しつつあることを述べたが、これに対して、動画配信サイトはどうであろうか?
動画配信サイトの失敗要因
動画配信サイトについて、みなさんはどのような印象をお持ちだろうか。
「みたことない」
「そもそもパソコンで動画をみようと思わない」
「一度はみたことあるけど、みなくなった」
「画面小さいし、映像も汚いので見る気がしない」、、、
といった方がまだまだ多いのではないだろうか。私自身も、ファンであるパリーグの某球団のネット配信以外は、仕事柄やむなくという以外はほとんどみない。
音楽配信と比較すると、大きな違いは、技術的な限界により「サービスの質=映像の質」が十分となっていないのが最大のポイントといえる。弊社の調査によれば、音楽配信に関しては、AAC、ATRAC3(音楽配信サービスのファイルフォーマット)やMP3の音質は確かに悪いかもしれながい、慣れてしまえばどうということもないと感じる人が大多数であるが、映像配信に関しては、テレビと比べ「映像の質が悪い、目が疲れる、止まる」ので使いたくないと思っている人が多いのだ。
確かに、ネット配信された動画をパソコンで2時間、3時間と映像を見続けられる人、見続けたことのある人がどの程度いるだろうか。何らかの特殊なモチベーション、例えば前述のプロ野球のようにその時間・その場所でしかみられないなどがないかぎり、なかなか長時間の視聴は行われないだろう。
ネット配信の強みである「使い勝手の良さ」に関してもまだまだ改善の余地が大きい。
- 試し視聴ができるものが限られる
- リンクを叩くと同じタイトルが第一話、第二話、、、と連続で表示される
(ひどいケースは1ページ同じタイトルのもので埋まる) - サムネイルが大きすぎる、また逆にない
- プレイリスト的なもの、ランキングなどの情報が乏しい
通信環境によって、ストリーミングが途中でとまる(これは、非常に大きな問題で、映像が途中でとまるというのはあたりまえだがテレビではありえない。映画・ドラマ等で感情移入した場面で、映像がとまると、、、)などまだまだ基本的なことが不満点としてあげられる。
さらに、タイトルの品揃えも問題である。ネットでの映像配信黎明期と比較すると揃ってきてはいるものの、レンタルビデオ店には遠く及ばない。サイトにもよるが、タイトル数は1/5から1/10といった水準である。また、コストの問題もからみビックタイトル、タイムリーなタイトルが圧倒的に少ない。映像配信をみる可能性がある潜在視聴者から
すると、レンタルビデオ、地上波、CS、CATVなど多くの選択肢があるなかで、現状の映像配信サイトのラインナップではそもそも視聴選択肢に入らないことが多いだろう。それが、映像品質の低さや使い勝手の悪さと相まって継続利用率の低さにつながると考えられる。
コピーに関しても、ダウンロードがそもそも許されないコンテンツも多く、端末間のポータビリティはほとんどない。
一方、価格については、ドラマなど複数話になっているものはレンタルより割高感があるが、それ以外の商品に関しては、ほぼレンタル価格と同様のレベルになってきている。動画の有料配信サイトに関しては、質(提供タイトル、画質等商品の基本的な提供状況)が一定以上のレベルになってくれば、価格は大きな問題にはならないと考えられる。
さらに、最近最も視聴されている動画配信サイトは広告モデル・無料型が多いため、価格が動画コンテンツ配信事業のボトルネックとはなりえないだろう。
映像コンテンツ配信と音楽配信を比較すると、音楽配信に関しては、価格面・タイトルのさらなる充実が課題として考えられる。それに対し、映像コンテンツ配信は、価格的な問題はほぼ解消されているものの、非常に基本的な機能・タイトルの充実が大きな課題といえる。
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