新規事業とプライマリーコミュニケーション(4)
揃えるべきビジネスアプリケーション
前回はニュースリリースを送る際の一工夫についてお話しましたが、実際には、メディアへ最初のリリースを出す際に別途用意しておいて欲しいものがいくつかあります。その「いくつか」は以下の通りです。
- (ニュースリリース)
- 報道用基礎資料(別名:プレスマテリアル/ファクトブック)
- 会社案内
- サービスパンフレット
- 封筒
- メディアサイト
基本セットとしてはこんなところでしょうか。そのなかでも見慣れないと思われる「報道用基礎資料」についてご説明させて頂きたいと思います。
報道用基礎資料とは、読んで字のごとく「新しい事業やサービスをマスメディアの担当者がより早く正確に理解するための資料」であり、内容は以下の構成で作られることがベーシックです。
報道用基礎資料の内容例
- 企業概要(Mission、Visionから強みまで)
- コアコンピタンスに関する説明(技術やスキーム、権利、ビジネスモデル)
- 上記コアコンピタンスを補完する要因の説明(研究開発・品質管理・人材育成・パートナー、など)
- 提供事業、サービス、製品の概要
- 業績推移 (新規事業の場合は見込み)
- 企業沿革
- 会社概要 (定量的なもの)
- 組織
- 経営者プロフィール
- 問い合わせ先
ぱっと見「えっ?これって会社案内なんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかと思います。
しかし、この基礎資料ではマスメディアに対してのみ配布するという概念から、広く遍く配布することを前提にした会社案内には記載することの出来ないより定量的な情報や、企業の競争力を担保している源泉についてのより詳しい考察や情報開示を行うのです。それをメディアサイドの人間が読み込むことで、企業を理解し、興味を持ち、そこに関係性が生まれる。
その為の補完資料であり、売り込みのための重要な戦略資料でもあるのです。
ただ、この報道用基礎資料は、ニュースリリースもそうですが、内容が第三者の視点で「客観的」に描かれていることが重要です。自分たちの想いがドロドロに入り客観性のかけらもない資料を記者達は嫌いますし、何よりより他人にとっては重要な情報を書き忘れる危険性があります。
ですので、通常これらの基礎資料は、PR会社や広告代理店、専門のライターなど第三者へ委託し制作するのが一般的です。委託された会社は、あなたの会社の社長や社員、時には工場や販売現場などにも赴きヒアリングをし、より客観的な視点であなたの会社の新規事業やサービスに関する基礎資料を仕上げます。
プレスサイト(報道関係者向けの特別ページ)を開いている企業の場合、この資料がPDFで保管されている場合もあります。リリースでは伝えきれない情報や、リリースには書けない小さいけど伝えておきたいあなたの会社の事実を盛り込むことが可能です。客観的、という視点だけを持ち続ければこの資料では最大限あなたの新規事業のPRをしていただいて結構です。
また、この報道用基礎資料を章ごとに分割できる仕様で作成し、必要に応じて内容を差し替え配布するという手法もあります。その場合はリリースと、基礎資料、そして他の資料(パンフレットなど)を一冊にまとめることが出来るような「プレスキットフォルダ」を作って、それに入れて渡します。
(よく記者発表会の時に配布するのですが、一般的にはこの様な、広報資料がセットになったものを”プレスキット”と呼んでいます。)
基礎資料のフルバージョンは、記者達と最初に関係を持つ際に渡すものなので、一回限りになることが多いため、より使い回しが効く作り方をする方がコスト効率は良くなる、という発想です。
封筒もバリエーション程度は…
リリース等を入れるA4がそのまま収まるタイプの封筒を「角2封筒」を言いますが、三つ折の資料や簡単な招待状、お礼状、チケットなどをメディアに届ける際には「長3封筒」と言われるものが便利です。用途に応じて使い分けることが出来るよう、二種類の会社ロゴ入り封筒位は用意なされることをお勧めします。
しかし、どうしてもそこにコストが使えない。という事情もあるでしょう。その場合は封筒に貼ることの出来る「会社ロゴのシール」を作成し、それを無地の白封筒などにペタペタ貼って送付する、という工夫がちょっとお洒落かもしれません。
メディアサイト(別名:プレスサイト/プレスルーム)
最近はネットベースで仕事をされるフリーのライターさんも増えましたし、IT化が遅れている(と言われている、ことにします)記者の方々でもサイトをフル活用する方が多くなりました。ニュースリリースもメールでの送付の割合が5割を超えている企業も少なくありませんし、フリーの方に限って言えば紙で送られるのは不便だし、FAXなんて自分の部屋の紙がどんどん使われるし迷惑千万って方も多いのが事実です。
ですので、今から新規事業を始められる皆さんは是非プレスサイトを構築し、ネットべースで記者達が情報を取得しようとした際に十分な情報が得られる様に環境を整備なされる事をお勧めいたします。プレスサイトと言っても、内容は特に難しいものではなく(大企業ならば利害関係者が多く、コンテンツの整備だけでも大変ですが)、以下のものが最新の状態で収録されていれば問題なく機能をすると考えます。
□PDF又は、HTMLで構築するコンテンツ
- ニュースリリースの全て
- (ミッション、ビジョン説明資料)
- 報道用基礎資料
- サービス、事業関係パンフレット
- 決算関係書類(決算報告書、財務資料 など)
- 決算時プレゼンテーション資料
- ロゴマニュアル
□画像データで用意するもの
- 代表者顔写真
- (製品パッケージ写真)
- (製品写真)
- 企業ロゴ
メディアサイトにも様々な例がありますが、大小含め参考になるものをご紹介させていただきます。
- 『トヨタ自動車』
- 『日産自動車』
- 『IBM』
- 『ソースネクスト』
- 『エプソン』※登録が必要
- 『サン・マイクロシステムズ』
- 『三菱商事』
- 『Yahoo! Japan』
- 『セキュアブレイン』
新規事業をより効率的に世の中に浸透させるためのプライマリーコミュニケーションに関し3回に渡ってお話をさせて頂きましたが、まだまだエッセンスのごく一部をお話出来たに過ぎません。
新規事業はそれを知る者が圧倒的に少ないのが既存の企業の事業との大きな違いです。一日も早く、より多くの人へ情報が伝わる事こそが新規事業の初速の確保にも繋がりますし、限られた経営資源をより効率的活用するための味方を集めてくれる結果にもつながります。
新規事業に強みを持つプライマルが何故敢えてコミュニケーションの話をし、そしてサービスとして提供しようとするのか。
それは上にも書きましたが、新規事業はその企業1社で成功するものではなく、より多くの賛同者やパートナー、ユーザーを生み出すことで成功しえるのであり、一方では事業を加速する実行支援コンサルティングを行い、もう一方ではその加速の効率をより高める「コミュニケーション・コンサルティング」を提供することこそ、限られたメンバーと資源で立ち上がる新規事業を成功させる力になると私たちプライマルは考えるからなのです。
次回から数回は、新規事業を成功させるもう一つの鍵でもある「社内コミュニケーション」に関してのお話をさせて頂ければと思います。
タグ: アプリケーション, コミュニケーション, メディアサイト